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2025/03/31

戦う機会を失ったマシン

こんにちは!サービステクニシャンの庄司です。

富士モータースポーツミュージアムで4月8日まで開催中のラリーカーの特別展示の連載、最終回は様々な事情で戦うことが出来なかったマシン、フィアットX1/9アバルト・プロトティーポをご紹介します。

まずはベースとなったフィアットX1/9について簡単にご紹介します。

車名は70年代のフィアットの長期プロジェクト『X1計画』の9番目のモデルであることから呼ばれていたコードネームがそのまま名付けられています。

ボディのデザイン及び全体のディメンションをカロッツェリア・ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニ氏が手掛け、シャシーやパワートレーンの開発にはジャンパオロ・ダラーラ氏が参加しています。

ボディはタルガトップを採用したリヤミドシップの2シーター。
エンジンはアウレリオ・ランプレディ氏が設計したランプレディユニットの1290cc直列4気筒SOHCを採用、4速マニュアルミッションと組み合わせられていました。

X1/9はイタリア本国で72年12月から販売が開始され、74年6月からは日本でも販売されています。

78年からはストロークアップにより1498ccとなったエンジンに5速マニュアルミッションの組み合わせに変更され、更に81年には従来のキャブレターからボッシュLジェトロニックを採用したインジェクション仕様に進化しました。

82年3月からは設計を担当したベルトーネ自身が販売を行うことになり、車名もベルトーネX1/9へ変更され、最終的に89年3月までに16万台以上が生産されました。

X1/9を基にしたラリーカーの開発は71年10月にフィアットがアバルトを買収した後からスタートし、74年3月から75年末にかけて実戦テストが行わていました。

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ボディは前後のバンパーを廃止し、リトラクタブルヘッドランプも廃止して固定式ヘッドランプに変更、前後オーバーフェンダーとフロントスポイラー、リヤスポイラーを採用、吸気のためのシュノーケルがエンジンフードに追加されています。

エンジンは当初1756ccで180psを発生するフィアット・アバルト124ラリー用の2バルブツインカムユニットでしたが、後に1840ccで210psを発生する4バルブツインカムユニットへ変更されています。

X1/9アバルト・プロトティーポは124ラリーよりもコンパクトで750kgと軽量であり、あのランチア・ストラトスよりも戦闘力が高かったと言われています。

しかし、フィアットの資金不足に加え、X1/9よりも131が売れると見込んだ販売施策と、既にランチアを傘下に収めていたこともありストラトスと並んでミドシップ車が2車種もラリーに参戦する意味を見出せず、結局開発は中止となり、そのノウハウだけがランチア・ストラトスの開発に引き継がれました。

こうしてフィアットX1/9アバルト・プロトティーポは、5台のラリー仕様とホモロゲーションモデルとして生産された1台の市販仕様、合計6台のみが作られた幻のラリーカーとなってしまいました。

☆フィアットX1/9アバルト・プロトティーポ 車両諸元
全長:3810mm
全幅:1690mm
全高:1180mm(シュノーケルを除く)
ホイールベース:2202mm
車両重量:750kg

エンジン型式:アバルト232G
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
ボア×ストローク:86×79.2mm
総排気量:1840cc
圧縮比:11.4
燃料供給装置:ウエーバー48IDFツインキャブレター(※)
※クーゲルフィッシャー機械式インジェクションもテスト
最高出力:210ps/7800rpm
最大トルク:21kgm/6200rpm
燃料タンク容量:80リットル

トランスミッション:クロスレシオ5速マニュアル
(ベータ・モンテカルロ用ケーシングにベータ・グループ4用ギヤ)

サスペンション:前後ストラット+コイル/アンチロールバー

ブレーキ:4輪ディスク

ホイール(前/後):F8J×13/R10J×13
タイヤサイズ(前/後):F235/45R13/R270/40R13

ということで、フィアットX1/9アバルト・プロトティーポのご紹介でした。

富士モータースポーツミュージアムは年中無休ですが、臨時休館や車両入替等がありますので、詳しくは公式ホームページや各種SNSをご確認ください。

j.syouji サービステクニシャン

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