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2025/02/27

大衆車からチャンピオンカーへ

こんにちは!サービステクニシャンの庄司です。

引き続き、富士モータースポーツミュージアムで4月8日まで展示されているラリーの名車をご紹介。

今回はフィアット131アバルトラリーです。

ベースとなるフィアット131ミラフィオーリは1974年から84年まで生産されていた小型乗用車です。
ボディタイプは2ドアと4ドアのセダンのほか、ワゴンボディのファミリアールも用意されていました。

当時フィアットグループ内でのラリー活動はランチア・ストラトスがワークスとして参戦していましたが、その特殊性から市販車のマーケティングに対する影響力が弱いこともあり、マーケティングの面でも影響を与えられるストラトスに変わる新たなマシンを登場させる必要性がありました。
そこで、発売当初から販売も好調だった131ミラフィオーリの販促活動を兼ねる目的でニューマシンの開発を行うことになります。

そんな131ミラフィオーリをベースにグループ4カテゴリーのラリーカーとして開発されたのが131アバルトラリーです。
131アバルトラリーは8か月の開発期間を経て76年4月2日にホモロゲーションを取得、ホモロゲーション取得に必要な400台を超えて1000台以上が生産されました。

アバルトラリーのボディデザインはカロッツェリア・ベルトーネの手によるもので、2ドアセダンをベースに前後のバンパーをカット、前後のオーバーフェンダー、ボンネット、トランクリッドはFRP製、ドア外板にアルミニウムを採用して軽量化、フロントにはエアダム、ルーフエンドとトランクリッドにはスポイラーを追加、元々5リンクリジッドだったリヤサスペンションをマクファーソンストラットに置き換えるなど、ラリーで戦うための変更が加えられています。

エンジンは名エンジニアのアウレリオ・ランプレディ氏が開発した通称『ランプレディユニット』の1995cc直列4気筒DOHC16バルブを採用、ホモロゲーションモデルではウェーバー34ADFキャブレターを採用して140psを発生、5速マニュアルトランスミッションを介して後輪を駆動します。

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76年の第6戦でWRCにデビューした当初のランプレディユニットは、ウェーバー48IDFツインキャブレターのウェットサンプ仕様で、最高出力215〜230ps/7500rpm、最大トルク23kgm/5750rpmを発生しました。
ボディは求められる性能に応じてボディパネルの板厚や補強の度合いが異なるターマック仕様の980kgのものとグラベル仕様の1020kgの2種類がイベントによって使い分けられていました。

この年は参戦2戦目となった第7戦の1000湖ラリーでマルク・アレンのドライブにより初優勝を飾りました。

77年4月には追加オプションでターマック仕様のボディが950kgまで軽量化され、同年7月には更にクーゲルフィッシャー製燃料噴射装置とマニエッティマレリ製電子制御式トランジスタ点火装置が採用され、最高出力が240psに向上、加えてオイル潤滑方式がウェットサンプからドライサンプへ変更されています。

この年は5勝を挙げ、初のメイクスタイトルを獲得しました。

78年からデビュー時のダークブルーとイエローで構成されたオリオ・フィアットカラーからアリタリアカラーへ一新されました。
この78年も5勝を挙げメイクスタイトル2連覇を達成しています。

79年はフォード、ランチア勢の攻勢に遭い、アレンが1000湖ラリーで挙げた1勝のみに留まります。

80年にはホワイトを基調に2色のブルーをあしらったカラーリングへ一新、エース格のドライバーとしてウォルター・ロールが加入、ロールが4勝してドライバーズタイトルを獲得、アレンが地元1000湖で挙げた1勝を加えて5勝したフィアットは3度目のメイクスタイトルも獲得しました。

81年になるとアウディ・クワトロがでデビューしたことで急速に戦闘力を失い、アレンがポルトガルで131アバルトラリーによる最後のWRC優勝を成し遂げ、この年限りでワークスとしての参戦を終えました。

☆フィアット131アバルトラリー 車両諸元
全長:4181mm
全幅:1820mm
ホイールベース:2490mm
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
ボア×ストローク:84×90mm
総排気量:1995cc
最高出力:230ps/7000rpm
最大トルク:23kgm/5600rpm
トランスミッション:5速マニュアル
サスペンション形式:マクファーソンストラット
ブレーキ形式:ベンチレーテッドディスク
ショックアブソーバー:アバルト/ビルシュタイン
ホイール:クロモドラ
ホイールサイズ(グラベル):前後7J×15インチ
ホイールサイズ:(ターマック):前10J×15インチ/後11J×15インチ
タイヤ:ピレリ
燃料タンク容量:60〜90リットル
車両重量:980〜1020kg

ということで、フィアット131アバルトラリーの紹介でした。
今回の連載は次回が最終回の予定です。

次回をお楽しみに!!

富士モータースポーツミュージアムは年中無休です。
ただし臨時休館や展示車両の入れ替え等が行われる場合がありますので、ホームページ等でご確認ください。

j.syouji サービステクニシャン

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