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2025/02/01

アフリカの王者

こんにちは!サービステクニシャンの庄司です。

引き続き、富士モータースポーツミュージアムで4月8日まで展示されているラリーの名車をご紹介いたします。
今回はグループBカテゴリーにおいて最も成功したFR車ともいわれている、トヨタ・セリカ・ツインカムターボ(TA64)です。

1980年代に入り、国産の高性能車に搭載されるエンジンは『ターボ』か『DOHC』かという議論がなされるようになっていました。
トヨタは81年7月に3代目となるA60型セリカをデビューさせており、当初は設計の古い18R―G型エンジンを搭載した2000GT(RA63)がトップグレードに据えられていました。
しかし、発売から1年2か月が経った82年9月には新開発のエンジンを搭載した1800GT―T(TA63)が登場したことで2000GTは早くもカタログ落ちすることになります。

その新開発エンジンは1770ccの排気量を持つ直列4気筒DOHC8バルブターボエンジンの3T―GTEU型であり、これは国産初のツインカムターボエンジンでもありました。

この1800GT―TグレードをベースにグループB規定の公認を受けるために限定販売されたのが、同年10に発売されたセリカGT―TS(TA64)でした。
市販仕様のGT―TSには、エボリューションモデル化を想定して『R―RIM』と呼ばれるウレタン樹脂製の前後ブリスターフェンダーを採用したほか、標準のGT―Tではセミトレーリングアームを用いた独立懸架式だったリヤのサスペンション形式を、廉価グレードに採用されていたラテラルロッド付き4リンクコイルのリジッドアクスル式サスペンションへと置き換えています。
これはラリーという競技を戦う上での整備性や耐久性を考慮したものでした。

インテリアは標準モデルとして設定されているラリーベース車の1600GTラリーと同じ廉価版内装を採用して簡素化されていました。

エンジンは3T―GTEU型のボアを0.5mm拡大し+21ccとした4T―GTEU型を搭載。
ただし総排気量以外のスペックは変わっておらず、最高出力160ps、最大トルク21.0kgmを発生しました。
僅か21ccの排気量アップには、最高出力の向上を目的としてエボリューションモデルで使用できる総排気量の最大値を拡大する狙いがありました。
当時の規定では当該クラスいっぱいまで排気量を拡大することが可能でしたが、元々の1770ccという排気量の場合、当時のターボ係数1.4を掛けた値が2478ccとなるため、排気量2001ccから2500ccまでのクラスに含まれてしまうため、排気量を拡大する余地がありませんでした。
これが1791ccとなると、ターボ係数1.4を掛けた値が2507.4ccとなるため、2501ccから3000ccまでのクラスに含まれることになり、エボリューションモデル化した際に排気量を拡大する余地が生まれることになります。

セリカ・ツインカムターボ(TA64)は83年3月2日付でFISA(世界自動車競技連盟)の公認を取得し、競技用エボリューションモデルとして生産された20台は同年8月1日付で無事にグループBラリーカーとしての公認を取得しました。

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トヨタ・セリカ・ツインカムターボ(TA64)

グループB仕様として製作されたセリカ・ツインカムターボは、トヨタ社内でデザインされた量産車とは全く異なる固定式ヘッドランプを持つボディを採用、公認取得の段階でリヤのFRP製フェンダーの使用が却下されたため、FRP製ブリスターフェンダーはフロントのみの採用となりました。
フェンダーのサイズは最大で10J幅のホイールを収めるために前後とも大きく広げられています。

396Eと呼ばれるラリー用の4T―GTEU型エンジンはボア、ストローク共に拡大することで総排気量2090ccとされ、ターボ係数を掛けた値は2926ccとなります。
このエンジンは量産仕様と同じツインプラグ2バルブヘッドという基本こそ同じですが、シリンダーヘッド、ブロック共に競技用に再設計されており、スロットルバルブは4連スロットルを採用し、ターボチャージャーはKKK製のK27タービンに加えて量産仕様には装備されていないインタークーラも追加されています。

WRCには83年の1000湖ラリー(フィンランド)でデビューし、デビュー2戦目となったコートジボワールでのアイボリーコーストラリーではビヨルン・ワルデガルドのドライブで初優勝を成し遂げます。

既にアウディ・クワトロがデビューし、四輪駆動ではないセリカはヨーロッパ圏で開催されるスプリントラリーでは当然勝ち目がなく、アフリカ以外で開催されたWRCでは84年のRACラリーで3位に入ったのが最上位でした。

しかしセリカ・ツインカムターボは設計がシンプルで頑丈であり、耐久性を必要とするアフリカ圏での耐久ラリーには滅法強く、84年から86年までサファリラリーを3連覇したほか、前出のアイボリーコーストラリーでも85年と86年に勝利しており、アフリカ圏で開催されたWRCで通算6勝を挙げ、アフリカの王者と呼ばれるようになりました。

展示車両は84年のサファリラリーでビヨルン・ワルデガルドのドライブで優勝したマシンです。

☆トヨタ・セリカ・ツインカムターボ(TA64/894B) 車両諸元
全長:4284mm
全幅:1785mm
全高:1360mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(前/後):1429mm/1446mm
トランスミッション:トヨタ/ヒューランド製5速マニュアル
サスペンション形式(前/後)マクファーソンストラット/4リンクリジッド
ブレーキ形式:ベンチレーテッドディスク
燃料タンク容量:80リットル
車両重量:1250kg(サファリ仕様は1450kg)

エンジン型式:396E(4T―GTEU改)
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC8バルブターボ
ボア×ストローク:89mm×84mm
総排気量:2090cc
圧縮比:8.0
最高出力:326ps/8000rpm
最大トルク:33kgm/5500rpm

次回も引き続き、ラリーの名車が登場しますので、お楽しみに!!

富士モータースポーツミュージアムは年中無休です。
ただし臨時休館や展示車両の入れ替え等がありますので、公式ホームページや各種公式SNSをご確認ください。

j.syouji サービステクニシャン

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