こんにちは！サービステクニシャンの庄司です。

引き続き、富士モータースポーツミュージアムで４月８日まで開催中のラリーカーの特別展示より。
今回は４ＷＤラリーカーの先駆けともいえるアウディ・クワトロです。

１９７２年に北米で行われたとあるラリーで、歴戦の後輪駆動ラリーカーを退けてスポット参戦した地元のジープ・ワゴニアが優勝するという前代未聞の出来事が発生したおかげで、世界ラリー選手権(ＷＲＣ)では四輪駆動車の参戦は禁止されていました。

７０年代末に開発が始まったアウディ・クワトロをモータースポーツで使用することを考えたとき、さすがにサーキットでのレースに使用することは考えられず、ラリーでの使用が前提とされていました。
アウディとして世界自動車競技連盟(ＦＩＳＡ)に対して四輪駆動車の参戦を解禁するように働きかけを行い、８０年１月には正式に四輪駆動車によるＷＲＣ参戦が認められることになります。

市販車のアウディ・クワトロは８０年３月にジュネーブショーで初公開されました。
当然、競技に参戦するためにはホモロゲーション(公認)を取得する必要がありましたが、クワトロは４５名の工員により手作業で生産されていたため一日に３台を製造するのが限界であり、グループ４の『連続した１２か月間に４００台生産された車両』という規定をクリアするために懸命の作業が続けられ、６７３台を生産し８１年１月に無事にホモロゲーションを取得しました。

量産モデルは２１４４ｃｃの直列５気筒ＳＯＨＣ１０バルブターボエンジンを搭載し、最高出力は２００ｐｓを発生、５速マニュアルトランスミッションに前後にロック機構を持つディファレンシャルを備えた４ＷＤ機構を組み合わせていました。
しかしこの４ＷＤ機構にはセンターデフが装備されていないため、特にタイトコーナーでは強烈なアンダーステアが生じる要因となっていました。

ラリー仕様では３６０ｐｓ、４２０Ｎｍを発生、デビューした８１年はハンヌ・ミッコラが２勝、ミシェル・ムートンが１勝を挙げマニュファクチャラー選手権で５位に入り、グループＢ元年となる８２年にはミシェル・ムートンが３勝、ハンヌ・ミッコラが２勝、スティグ・ブロンクビストが２勝を挙げ、アウディは初のマニュファクチャラータイトルを獲得しました。

８３年は完全にグループＢへと移行したため、クワトロも８３年１月１日付でグループＢのホモロゲーションを取得し、クワトロＡ１へ発展しエンジン出力が３７０ｐｓまで向上、新たにブリスターフェンダーを採用したボディは若干の軽量化が行われたものの、ターボ係数１．４により僅か３ｃｃの超過で３００１ｃｃから３５００ｃｃまでのテーブルに区分されていたクワトロは、依然として重い車体での戦いを強いられていたため、同年５月に新たにクワトロＡ２の公認を取得しました。

クワトロＡ２はストロークを短縮し２１０９ｃｃとしたエンジンを採用、これにより３０００ｃｃ以下のテーブルに区分されることになり軽量化が図られました。
このほか、ターボチャージャーが大型化され、機械式インジェクションから電子制御式インジェクションへ変更、トランスミッションは小型軽量化が行われたうえでギヤレシオも一新され、それまでの５速仕様に加えて６速仕様も用意されました。
４ＷＤ機構もドライブシャフトの強化が行われましたが、依然としてセンターデフは装備されませんでした。

８３年は５勝を挙げたハンヌ・ミッコラがドライバーズチャンピオンに輝いたものの、マニュファクチャラータイトルはミドシップリヤドライブのラリー０３７で戦ったランチアに奪われてしまいます。

クワトロＡ２がワークスとして参戦した最後の年となる８４年はシーズン途中でスポーツ・クワトロＳ１(ショートクワトロ)がデビューしたものの、過敏すぎる操縦性が災いし多くのドライバーがこれを使用せず、大半のイベントでＡ２を駆ったスティグ・ブロンクビストがドライバーズチャンピオンを獲得、またマニュファクチャラータイトルも獲得しました。

展示車両はグループ４車両としてデビューし８３年にグループＢ仕様へアップデートされたものです。

☆アウディ・クワトロＡ２　車両諸元
全長：４４０４ｍｍ
全幅：１７３３ｍｍ
全高：１３４４ｍｍ
ホイールベース：２５２４ｍｍ
エンジン形式：水冷直列５気筒ＳＯＨＣ１０バルブターボ
ボア×ストローク：７９．５×８５ｍｍ
総排気量：２１０９ｃｃ
圧縮比：６．５
最高出力：３７０ｂｈｐ／６５００ｒｐｍ
最大トルク：４２０Ｎｍ／３５００ｒｐｍ
ターボチャージャー：ＫＫＫ　Ｋ２７
燃料供給装置：ボッシュ電子制御式燃料噴射装置
ギヤボックス：横置き５速または６速マニュアル
フロントデフ：機械式
センターデフ：なし
リヤデフ：機械式
サスペンション形式(前後)：マクファーソンストラット

次回も引き続き、ラリーの名車が登場しますので、お楽しみに！！

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